Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル

     “秋の恵みに
 



今年もまた結構な酷暑だった夏があっという間に駆け去って、
そちらもせっかちな様子で秋がやってきたそのまま、
衣替えを待たずして長袖やら上着やら、秋の装いが街を埋め。
いつもなら前倒しが過ぎるぞといいたくなるハロウィン関連のあれやこれやも、
かぼちゃや栗という秋の味覚には早々親しみを覚えたくなるせいか、
特に違和感を覚えない、そんな今年の秋だったりし。

 「グラタンとかシチューは さすがに早いかなとか思ってたんだが、
  陽が落ちると結構な寒さになるしなぁ。」

 「モーニングのカップスープが美味いからなぁ。」

なになに、お前そんな洒落たの食ってんの?
うっせぇなっ、たまにだよ たまに…などと、
こちらはお昼ごはんだろう、コンビニや弁当屋のランチメニューを広げて
練習の狭間の長休憩を寛いでおいでのお兄さんたちが
グラウンド脇の芝草の上へ三三五五散らばっておいで。
現在只今、秋のリーグ戦 真っ只中の、
賊大アメフトチーム、フリルド・リザードの面々で。
高校時代までを遡ってのちょっと前なら、
数を集めてバイクを乗り回し、やんちゃな行動が目に余るばかりな
皆が眉をしかめて避けて通るだろう乱暴者でしかなかったものが。
今の代の総長が 族でもチームでも頭のポジションへと立ってからは、
もしかして喧嘩より底力も体力も根性もいるだろう、
アメフトの方へとその活動を特化したものだから。
遠乗りツーリングもしないじゃないが、
目が合ったの いけ好かないのという程度でいちいち喧嘩腰になる揮発性は、
グラウンドで発揮せよとの躾けも行き届いてのこと。
高校時代のチームは、
傾向転換したばかりゆえの 新参に等しかったにもかかわらず、
あっという間に、優勝争いをするクチの強豪チームの仲間入りをしたし。
ほとんどの面子が持ち上がった大学のチームもまた、
年々、リーグの階級を着実に上げ続けという、
目覚ましい進歩ぶり。
この秋の星取戦でも、
夏休み明けからこっちの毎週末、
土日はどこかのスタジアムにて、
リーグの頂点目指して負けられないゲームを繰り広げており。
こうまでチームカラーが変わったのは、
バイク仲間でもあったというつながりから、
メンバーたちの主将殿への傾倒が強かったゆえ、
半端なツレ感覚以上に結束が固いというのもあったれど。
そんな主将様の傍らに、それはそれはおっかない存在がひょこりと現れたからでもあって。
エアリーなくせっ毛の金髪が、
賢そうな、それでいて可憐な幼いお顔にようようマッチし、
すんなりした四肢が小柄で華奢な姿態を尚のこと愛らしく魅せて。
まだちょっと力みの強さも幼さに抑えられている、そんな金茶の双眸は夢見るような趣の、

 「おー、ちゃんとよく噛んで食えよ、最後の育ち盛り世代。」

今日はいい天気だし、食ったら眠くなるかもしれんが、
ただの昼寝でも何か掛けないと風邪ひくぞと続くに至り、

 “こっちが言ってやるべき言い回しだと思うんだが。”

言われた全員が、思いはしても言い返せない、
小さいのにそれはそれは恐ろしい鬼軍曹でもあるちみっ子が、
平日だがまだギリで半日授業組なのか、
学校帰りらしくランドセル代わりのデイバッグを背負ったまま、
大学のグラウンドへ登場しておいで。
相変わらず、先ほど並べたような愛らしい風貌だというに、
こぉんな偉そうな口利きなのが、
こちらのお兄さんたちには違和感なく受け取られているのは、
小学生でありながら、口は立つわ(主に毒舌)、
pc使った様々なトラップの名手だわ、
モデルガンの命中率が素晴らしく高いわと来て、
身長も体重も年齢も自分たちの半分だったころからすでに、
頭が上がらない恐るべき存在だということが
骨身にしみて刷り込まれてしまっているからで。

しかもその上、

 「何か甘い匂いしねぇか?」
 「別に材料ぶちまけるようなドジは踏んでねぇけどな。」

部員の皆様へ、灰汁の強いご挨拶をしてから、立ったかと向かったベンチ前。
主務やメグさんと向かい合い、
メンバーたちのファイルや次の相手のデータを突き合わせていた葉柱主将が
挨拶も省略して差し向けた云いようへ。
言い回しこそ悪態ぽかったものの、
もっと構えと言いたげにいい笑顔でいたりする、
一部限定の甘えっ子、別名ツンデレさんでもあって。
そこまでの把握があるんだか、いやいや自覚はなさそうな主将様が、
どんな事態でも“小さい子のすることだから”と放任状態にしているものだから。
(チームのレベルアップにつながっていればこそではあるけれど…)
他の部員も口答えなど出来ましょうかという、一種 野放し状態になっているこの数年で。
でもまあ、体力はあっても粘りが足りなかったり、
持久力に問題があったところは大きく改善されてもおり。
その辺りの忍耐を養えたのは間違いなくこの子悪魔様のおかげもあるので、
メンバーの側にしても不服があると強く言い出せはしないようで…。

 「おやつ持ってきたぞ、食え。」

可愛らしくもあどけないとは言えぬが、彼にしては結構ご機嫌そうな笑み浮かべ、
ほれと差し出されたのは小さめの化粧箱。

 「他の奴らのは、今、女子マネの姉ちゃんたちが焼いてるかんな。」

心配すんなと言いつつ、
ベンチへ乗っけた白い箱をパカリと開けば、そこに収められていた小さなケーキが顔を出し、

 「おや、モンブランじゃないか。」
 「おお。俺が作ったんだぞ、実習で。」

今日は家庭科の実習があったらしく、

 「課題はカップケーキだったけど、
  それじゃ詰まんないからってちょっと足したんだな♪」
 「そりゃ凄いねぇvv」

カップケーキを土台にすると少し硬いんだけどさ、なんて
謙遜気味に反省点を口にする妖一くんなのへ、
いやいやこれは上出来だ、偉い偉いと、
メグさんはただただ褒めてやるばかりだったが。
葉柱の方はさすがにそうもいかないようで、
切れ長で凄みもある三白眼を、ますますと眇めて見せ、

 「お前、学校で
  あの散らかしクッキングでキッチンクラッシャーぶり発揮したのか?」

マロンクリームは、栗の甘露煮から作りましょう。
ミルミキサーなどのスピードカッターですりつぶし、
やわらかく練ったバターと砂糖と合わせ、生クリームへ加えればそれでOKvv
カップケーキを横に半分に切り分けて、
底の方を土台にします。
甘いのがお好きなら、メイプルシロップを染ませてから、
栗の甘露煮を半分に切って置いてもいいし、
マロンクリームの小さめのドームを絞り出してもよし。
それを覆うように土台の広さの範囲内でホイップした生クリームを絞り出し、
その上へ、例の細口の口金から絞り出したマロンクリームでデコレートすれば、
お馴染みなモンブランの出来上がり。
さっきの残りの栗の甘露煮をてっぺんへ乗っけて、
さあ召し上がれvv

…という工程を、
標準の“カップケーキを焼きましょう”に足しただけと言い出した坊やだったが。

 「他のことへはとんでもなく器用なくせに、
  何でお前、料理に限っちゃ手際が悪いかな。」

 「うっせぇな。出来がよけりゃあ相殺されっだろ?」

相殺なんて言い回しが当たり前に出てくる四年生というのも確かに大したもので、
それに、ご披露されたケーキそのものも、
そこいらのお店屋さんに並べて遜色なさそうな見事な出来。
なので、メグさんも主務のお兄さんも話が見えずにキョトンとするばかりなのだけど。
実はこちらの坊や、
ちょっとチャーハンでもと思い立っての手掛ければ、
刻んで炒めるだけという簡単な料理でも、
何をどうしたらそうなるものか、
ボウルやお玉、炒め物用のヘラなどが数個も積まれて山になるわ、
何故だか蒸し器やミキサーまでが散乱するわと、
台所の広さと備品を分け隔てなく使い切るから恐ろしく。
自分でも自覚があるものか、微妙に頬を膨らませた金髪の坊やだったが、
器用な手つきで紙トレイへそれぞれのを取り分けてどうぞと差し出しながら、

 「第一、クラス全員でかかった実習だぞ?」

ほれと、葉柱へも可愛らしいケーキを受け取らせ、

 「班分けされてても、
  実際には切るばっかとか洗いものばっかって担当になっちまうもんだろが。」
 「…そか。」

他の面子には片づけだけやらせたなと、
そこまでを無言の内にも把握して。
まあそれでも点数がつくなら重畳かもなと、
済んだことへの納得を持って来、
可愛らしい栗風味のケーキ、やっと素直に堪能したお兄さんだったのでありました。





     〜Fine〜  15.10.09.


 *今年は本当に秋が駆け足でやってきた感満載ですよね。
  部員さんたちの会話じゃないですが、
  秋の味覚を飛び越して、
  シチューとかグラタン食べたいと早くも思うほどですし。

ご感想はこちらvv めーるふぉーむvv  

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